眠るのを諦めて母親の洗濯物を持ってランドリー・ルームに向かった。洗濯機にワンピースとキャミソールを入れようとして、手が止まった。それらの臭いを確認したくなり、鼻に近づけた。汗と酒の臭い。確かに私にとってはそれが遠くにある魔法の国からのプレゼントのように思える。その臭いでいっぱい涙が零れ始めた。眠るためにキッチンに行って、冷蔵庫からミルクを取り出した。マグカップに注ぎ、砂糖をたっぷりと入れて、レンジで温めた。床に座って、しばらく飲んだ。まだ洗濯物は手放せなかった。ようやく涙が枯れ、洗濯物を洗濯機に入れる心の準備ができた頃にはホットーミルクを三杯も飲んでいた。部屋に戻るともう母親の姿はなかった。ホットーミルクと疲れのおかげで眠くなっていた私はベッドに倒れ込むように横になった。母親はどこに行ったのだろう?きっと自分の部屋に戻ったのだろう。いや、ひょっとして私は母親の夢を見ていたのかもしれないな。そう眠りに落ちる前に思った。いい夢だったな。しかしこの部屋は甘いようなすっぱいような汗と酒の臭いでいっぱいになっている。朝、日が覚めると私はまず携帯のメールを確認した。やはり何件か入っている。友達や知り合いには、おはよう、を返信した。しばらくして私がキッチンで朝ごはんの用意をしていた時、メールに返信したことを驚くようなメッセージが返ってきた。今日は気分がよかったから、と返した。確かに気分がよかった。人は誰でも一度は違う自分になることを、夢見るのじゃないだろうか。それが現実になったこと。