一般庶民の住宅ではどうか。庶民のすまいにとって、いちばんたいせつなものは、むかしから、火、すなわち炉やかまどであり、そしてその思想はずいぶんのちまでつづいた。とはいっても、庶民のすまいで、接客という行為をぜんぜん無視したわけではない。文化人類学者は、動物の巣と人間の住居とのちがいは、他の動物(他人)を、じぶんの巣(住居)のなかへ招じいれるかどうかだけだというが、そういう意味での接客空間は、通時代的に庶民のどの住居にもみられた。
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近世にあらわれる農家の出居、町家の座敷などは、そのよく完成されたものということができる。ただ、それらが独立の空間として、かつ貴族や武士階級のように、家のなかでのもっともたいせつな空間として、成立するほどにはいたらなかっただけである。